2008年11月13日 手術後の傷跡について
~手術後の傷跡について~ 帝王切開後の腹部の傷跡など。
形成外科の診療には、傷の処置、傷跡の治療というのも重要な位置をしめます。
一般的に事故などで怪我した場合には、傷跡がのこってしまったら病院に行こう!と思われるかもしれませんが、手術で生じた傷跡の場合、その手術対象となった基礎疾患が治ってしまうと担当医にも相談をしにくいためか、傷跡そものは放置されることが多いように思います。
今回の内容はコラムというよりも、これらの症状で悩む方に少しでも参考になればと思います。
たとえば帝王切開後の傷が、徐々に肥厚をしてくるといった例があります。
出産も終えて、育児に忙しく、たまに病院に通うとすればそれは小児科の方が多かったり、とても多忙な時期に、傷が肥厚してきて赤みを増し、そのうち痛みを生じてくるということがあります。
ありますが、大半は肥厚性瘢痕といって、全体の傷のうち、中央付近に特に症状がでてきます。
以下は日本形成外科学会ホームページより抜粋しました「肥厚性瘢痕」についての記載です。
(面倒な方は(*)印までスキップしてください)
1.肥厚性瘢痕とは
ケロイドとの区別が長い間論争の的となっており、これにより肥厚性瘢痕の表現が研究者により、外観、形態、性質において微妙な違いがあり、統一された定義が作られるまでには到っていません。しかしながら一般的には、いろいろの程度の赤味を伴った隆起した瘢痕が肥厚性瘢痕と言われています。赤味に関しては、発症して発育増殖する時は赤味が強く、これは次第に赤紫色に移行し、ついには赤味は消失して隆起のみを残すなど、さまざまです。しかしいずれにしろ隆起のある間は字のごとく肥厚性瘢痕と言えます。
肥厚性瘢痕の原因としては、外傷、熱傷、手術による縫合創などがあげられます。この肥厚性瘢痕の発生増殖は、創部が縫合閉鎖、上皮化が完了してから始まり、隆起拡大増殖していくのがその特徴になっています。
肥厚性瘢痕はまた顔面や関節部にかかる場合、しばしば拘縮をきたし、いろいろな程度の機能障害の原因となります。
現在隆起した瘢痕は、一般的にはケロイドと肥厚性瘢痕の概念に分けて論じられています。これによると肥厚性瘢痕は、発生後数年以内に平坦化し赤味も消失し、通常の成熟瘢痕になっていきます。これに対しケロイドは増殖傾向が強く、なかなか消褪傾向を示しません。また肥厚性瘢痕には、ケロイドの大きな特徴としてあげられている周辺に滲みだすような潮紅が認められないとされています。この他ケロイドは肥厚性瘢痕と比べると、治療に対し抵抗性が強く、再発傾向が強いとされています。
しかしながら肥厚性瘢痕とケロイドが、特に一つの瘢痕の中に共存すること、また同一原因で一方はケロイドに、他方は肥厚性瘢痕になっていることもあります。このようなことから「両者は体質的な面も確かに関与するが、局所の種々の環境要素が複雑にからみあい、これにより瘢痕の表現形態ならびにその持続性が異なったものであって、両者は本質的には同質のもの、一連のものである」という考えも近年注目されています。
(*)
2.治療法とその効果など
治療にあたっては肥厚性瘢痕は、いわゆるケロイドと異なり、前述のごとく多くの場合平坦化していくこと、またその色も次第にうすくなっていくことから、時間をかけた注意深い経過観察が重要で、決して外科的治療を急いではいけません。この他局所の運動抑制など可及的な安静を保つことが、肥厚性瘢痕の発生増殖を抑制ならびに消褪傾向を促進することからこれらのことにも十分配慮すべきです。
このようなことから肥厚性瘢痕の治療方法は次の二つに分けられます。
(1)早期増殖期
A. 種々の圧迫固定方法(テープ、スポンジ他)
B. ステロイドテープ
C. トラニラスト内服(瘢痕の増殖を抑える薬剤)
D. シリコンゲルシート
E.軟膏療法(掻痒の抑制、保湿効果)
これらの治療方法は増殖抑制、消褪傾向の促進、自覚症状の軽減を目指したものです。
(2)症状固定期
醜形が高度の場合、下記の治療法が検討されています。
A.小さく、また線状の場合、形成外科的切除縫合、これに後療法として圧迫固定、さらにトラニラストの内服を行うこともあります。
B.目立つ部位で範囲が広い場合、切除し整容的な植皮ならびに皮弁による治療を行います。
さて、先ほどの帝王切開後の肥厚性瘢痕についてはどうしたらよいでしょうか。
育児による運動量の多さや忙しさなどを考えますと、手術を行って傷を安静にする、きっちり圧迫固定するといったことは難しいと思われ、ファーストチョイスではありません。
まずは、そもそも傷が肥厚しはじめているのをおさえないといけませんので、物理的にテープ固定を行います。
テープ固定とは、かぶれにくいサージカルテープを傷そのものに貼ることです。
物理的な固定が目的ですので、貼り替えは極力おこなわず、週に1~2度貼り替えるようにします。
また赤みや痒みが非常に強いときは、ステロイド含有のテープを貼ったり、軟膏をぬったりすることもあります。 正しい方法でテープ固定をおこなっていれば痒みや痛みといった症状は治まってくることが多く、軟膏とテープ固定は併用できないため(軟膏を塗ったらテープが貼れないので) とにかくテープ固定の指導を行うことが多いです。
今回の場合の、帝王切開後の瘢痕に対しては、まずはテープ固定をすることが最も有効で現実的な方法だと考えます。
トラニラスト(リザベン)という内服薬も肥厚性瘢痕、ケロイドの治療ではよく処方されるお薬なのですが妊婦では禁忌なので、授乳中であれば どちらかというと内服はしたくない、というのがお母さんの心情だと思いますので、まずは正しい方法でテープ固定をすることから始めます。
さらに、こすれたりして痛みが出ている場合にはそれらの刺激もよくありませんので、傷跡がむき出しの状態でジーンズなどの硬い生地の衣服が擦れる、なども避けた方が良いでしょう。
肥厚性瘢痕の治療においてもテープ固定が基本の基本ですが、そもそも肥厚性瘢痕になる前に、手術による傷跡にはテープ固定を行うのが、傷を安定させなるべく早期に綺麗に治すためには非常に重要です。
したがって手術による瘢痕だけでなく、傷跡を生じた場合には傷跡の治療に対して的確なアドバイスを得るために、皮膚科や形成外科などを受診されるというのも、一法かと思います。
術後の傷や、事故で生じた傷に対して早期にテープ固定を行うといのは、まだまだ他科では一般的ではありません。
甲状腺腫瘍摘出を専門とする病院や、一部の産婦人科など、傷を綺麗に治すことにも積極的な病院もありますが、まだまだ多くはありませんので、テープ固定をに関しては形成外科医を受診しなければ説明も聞けない、ということもあると思います。
たかがテープですが、これが結構重要!ですので、もしもの時はお近くの形成外科を受診されることをお勧めします。
- by natsu-clinic
- at 19:30
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